対人稽古に関する感染予防ガイドライン

はじめに
公益財団法人全日本剣道連盟(以下「全剣連」)は、今回、令和 2 年 6 月 4 日に「対人稽
古再開に関する感染予防ガイドライン」を制定しました。その後剣道愛好家の皆様がこのガ
イドラインを遵守していただいたことともあり、稽古に由来するクラスター発生は見られ
ませんでした。また、この1年間、新型コロナウイルス感染症の収束が見られない一方、ワ
クチン接種も進み始めました。全剣連はこうした状況に鑑み、また(1)剣道の稽古がいわゆ
る「3 密(密閉、密集、密接)」に該当しうること、(2)新型コロナウイルスの感染源とな
りうる飛沫飛散が多いこと、(3)新型コロナが無症状感染者からもうつる可能性があるこ
と、(4)変異ウイルスが増えつつあること、などを考慮して、今回、「対人稽古再開に関す
る感染予防ガイドライン」を改訂し、「対人稽古に関する感染予防ガイドライン」(以下「全
剣連ガイドライン」)を策定いたしました。
剣道をする方々は、このガイドラインに沿って稽古をされますようお願いいたします。ま
た、各組織・団体にあっては、全剣連ガイドラインを参考に、地域における感染状況、会員
構成(年齢や性別、習熟度)、稽古場所、天候等の特性に応じた組織・団体ごとのガイドラ
イン作成に取り組んでください。
ガイドライン
1. 稽古参加について
・基礎疾患のある者は稽古に参加しない。
・基礎疾患のある者とは、「糖尿病、心不全、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、透析を受けて
 いる方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている者など」をいう。
・やむを得ない事情があってこれらの者が稽古に参加しようとする場合は、あらかじめ主治
 医の了解を得ること。
・新型コロナウイルス感染症ワクチン接種について
 本ワクチン接種により発症率、重症化率も低減するため、接種を奨励する。
・以下の条件に該当する者は稽古に参加しない。
① 体調がよくない場合
② 発熱、咳、咽頭痛などの症状がある場合
③ 症状がなくても感染している場合があるので、体調が普段と異なる時は、稽古へ
 の参加を慎重に判断すること
④ 同居家族や身近な知人に感染が疑われる者がいる場合
⑤ 過去 14 日以内に政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、
 地域等への渡航又は当該在住者との濃厚接触がある場合
・所属団体以外の者が稽古に参加する場合、あるいは他団体と合同稽古をする場合、責任者
 は、外部の者等に、検温、手指消毒、連絡先の確認その他当団体の規則の遵守を徹底させる
 とともに、稽古人数増加により密にならないよう指導する。
・稽古に参加する者は、自宅と稽古場所の往復の際にはマスクを着用し、感染予防に努める。
(留意事項)高齢者の稽古
 高齢者は、新型コロナウイルス感染症に感染した場合、一気に重症化しやすく、また、
 死亡率も高い。したがって、60 歳以上の場合は、稽古の実施について若年層以上に慎重な
 判断を行うものとする。
2.稽古を始める前に
① 稽古前に検温を行い、発熱がある場合は稽古しない。
② 発熱がなくても、咳、咽頭痛がある場合も稽古しない。
③ 稽古前に、手洗い、うがい、アルコールによる手指の除菌を行う。
④ 稽古の都度、道場(稽古場)で記帳(氏名、連絡先等)を行う。
⑤ 着替えは自宅で行う、又は更衣室を交代で使用する等更衣室の密集を避け、また
  徹底的な換気を行う。更衣の際にマスクの着用を徹底する。
⑥ 床の湿式清掃もしくはモップ掛けを行う。 その他にも共用のものについても、除
  菌を行う。
⑦ 高齢者はワクチン二回接種をしてから稽古に参加することが勧められる。また、
  ワクチン接種後は、1週間以上安静の上参加することが望ましい。
3.稽古に当たって
① 通風・換気に十分に注意すること(マイクロ飛沫は通風・換気により吹き飛ばす
  ことができる)。
  このためには、道場の窓、扉は開けた状況でエアコンや送風機を使用すること。
② 送風機を用いる場合には、上方または下方に角度を付けて送風し、空気が室内全
  体に拡散するように工夫すること。
③ 準備体操、素振り等は、原則一列となって同じ方向を向き、向かい合わない。や
  むなく向かい合う場合、又は 2 列以上になる場合は、およそ 2m の距離を取
  る。発声も極力控える。
④ 鍔競り合いを避ける。やむを得ず鍔競り合いとなった場合は、すぐに分かれるか
  引き技を出し、掛け声は出さない(引き技時の発声は認める)。
⑤ 感染のリスクを低めるため、稽古時間はいつもより短くする(一回 30 分以内)。
⑥ 稽古間の休憩時間に、5分程度、窓、扉を完全に開けるとともに、送風機を併用
 して十分な換気を行う。
⑦ 稽古を行う者は、飛沫の飛散防止等のため、以下の対応を行う。
 (ア)稽古を行う者は、装着した者から相手への飛沫の飛散を防止するため、必
 ずマスク(以下「面マスク」)を着用する。面マスクは、鼻を覆って着用す
 ることとする。
(イ)面マスクは、呼吸障害を避けるため、最近普及している剣道用の通気性の
  あるものを使用されたい。また、顎の部分を締め付けないもので、吐息が
 側方に逃げるものが望ましい。場合によっては、マスクの下にインナーフ
 レームのようなものを入れて、マスクと口の間に空間を作ると、呼吸がし
  やすくなることがある。
(ウ)変異株流行の折、相手からの飛沫を効率良く防止するため、マウスシール
  ドの着用は必須とする。 シールドは、ポリカーボネイト積層板等の素材で
 製作された面金内側に装着する用具であるが、素材は特に指定しない。
(エ)他にも眼と鼻の部分を覆うシールドについても着用を推奨する。
⑧ これらの用具を装着する際には、熱中症の発症を防ぐため、以下のことに特に気
  をつける。
1) 暑さにからだを慣らすことが重要なので、暑熱順化をすること(詳細は
   以下を参照:https://www.kendo.or.jp/knowledge/medicinescience/heatadaptability/)
2) 稽古日の気温、湿度をチェックし、特に道場の温度と風通しに気をつけ
   ること。
3) 練習前に水分をとるとともに、稽古の間も休憩時間に水分をとり、水分
   補給に十分に気をつけること。
4) 暑い時の面マスクとシールドの着用はからだに堪えるので、稽古時間を
   普通より短くすること(できれば一回 30 分以内)。
5) おかしいなと思ったら自ら無理をしないこと。
6) 周りの人たちにも目を配り、無理をさせないこと。
7) 普段から規則正しい生活をして、体調管理に気をつけること。
   なお、この面マスク・シールドの使用は、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの
   暫定的な措置である。これらの使用に当たっては、上記の通り、必ず、稽古時間の短縮等
   その他対応も併せ行っていただきたい。
6.稽古の後に
1)稽古終了後、先生や先輩等へ礼を行う際は、2m の間隔をあける。
2)稽古終了後は、面マスクをビニール袋に入れて持ち帰り、洗浄、除菌を行う。
3)稽古後、剣道具(特に面、小手)、使用済みのシールドは、アルコール噴霧により消
  毒する。
4)剣道着・袴・手拭い・竹刀は稽古終了の都度持ち帰り、洗濯や除菌を行うことが望ま
  しい。
5)稽古後も、洗顔、手洗い、うがい、アルコールによる手指の除菌を行う。
6)稽古後の複数での会食は行わない。
7.感染が判明した場合
  稽古の参加者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、速やかに所属団体責任者に
  報告する。
  その後、責任者は全剣連ホームページから「剣道における新型コロナウイルス感染
  症報告フォーム(https://www.kendo.or.jp/information/20201225/)」を用い
  て、感染の詳細を報告する。
終わりに
  全剣連ガイドラインは、専門家の協力により作成しておりますが、新型コロナウイルス感
  染症への感染を防止するための方策については、必ずしも十分な科学的知見が集積されて
  いる訳ではありません。このため、このガイドラインは、現段階で得られている知見等に基
  づき作成されていることにご留意願います。また、今後の知見の集積及び各地域の感染状況
  を踏まえて、逐次見直すことがあり得ることもご了解ください。

※ これは令和3年8月4日に全日本剣道連盟が公表した「全剣連ガイドライン」を 参考したものです。